生活習慣病の通院がつらくなったら——家に来る「かかりつけ医」という選択肢

「血圧の薬、実はしばらく前に切れちゃってて」。訪問診療のご相談をいただいて初めてご自宅に伺うと、こういうお話が出てくることがあります。ご本人に治療をやめるつもりがあったわけではありません。ただ、病院までの道のりがだんだんしんどくなって、「次の受診はもう少し落ち着いてから」と先延ばしにしているうちに、気づけば半年経っていた——そんな経緯であることがほとんどです。高血圧や糖尿病、脂質異常症といったいわゆる生活習慣病は、若いころから何十年も付き合う病気ですが、実は「通院が難しくなってから」が、いちばん気を配りたい時期なのだと思っています。

生活習慣病は、通えるうちだけの病気ではない

生活習慣病の管理は、外来に定期的に通えているあいだは、比較的うまく回ります。数か月に一度の採血で数値を確認して、薬を微調整して、また次の予約を取る。この繰り返しで、何年も安定して過ごされる方はたくさんいらっしゃいます。ところが、足腰が弱くなったり、認知症の症状が出てきたり、送り迎えをしていたご家族の事情が変わったりすると、この「当たり前の繰り返し」が急に難しくなります。札幌だと、冬の雪道が理由で通院間隔が空いてしまう方も少なくありません。困るのは、生活習慣病がはっきりした自覚症状を出さないまま進む種類の病気だということです。痛くもかゆくもないので、受診が空いていることの重大さが、ご本人にもご家族にも伝わりにくいのです。

受診が途切れると、何が起きやすいのか

通院が途切れたときに私たちが心配するのは、大きく三つあります。ひとつは、血圧や血糖の状態が、確かめられないまま時間だけが過ぎることです。じわじわとした変化は体感しにくいので、次に医療につながったときには腎臓の機能が下がっていたり、むくみや息切れが出てきていたりすることがあります(血圧については高血圧を放置するとどうなるかの記事でも触れました)。

ふたつめは、お薬が手元にあっても、実際には飲めていないことがある点です。飲み方が複雑で途中であきらめてしまった、副作用が気になって自己判断でやめた、単純に飲み忘れが増えた——理由はさまざまですが、外来の短い診察時間では言い出しづらい話でもあります。三つめは、通院先が複数に分かれていて、全体を見る人がいなくなってしまうことです。内科と整形外科と眼科と、それぞれ別の医療機関にかかっているうちに、薬の組み合わせや優先順位を誰も俯瞰していない、という状態が生まれます。

家で診ると、見えてくること

訪問診療の「かかりつけ医」がこうした場面で役に立つのは、生活の場そのものを一緒に見られるからです。台所に立ってみると、味つけの癖や、実際に誰が食事を用意しているのかがわかります。居間から寝室、トイレまでの動線を歩いていただくと、どのくらいの距離で息が上がるのかが見えます。棚の上に手つかずの薬袋が積まれていることに気づけば、その場で飲み方を組み直したり、種類を整理できないか検討したりできます。お薬の受け取り自体が負担になっているようなら、薬局に自宅まで届けていただく仕組みを組み合わせることもできます。

診察室で「運動しましょう、塩分を控えましょう」とお伝えするのは簡単ですが、その方の暮らしに合っていなければ続きません。家で話していると、「毎日の散歩は無理でも、玄関までの出入りは自分でやってみましょうか」「この一品だけ薄味にしてみませんか」といった、現実的な一歩に落とし込みやすくなります。私自身、訪問先で冷蔵庫を見せていただいて、こちらの想定がまるで違っていたと気づいたことが何度もあります。

複数の病気を、ひとりの主治医がまとめて診る

高齢になると、高血圧・糖尿病・脂質異常症に加えて、心不全や慢性腎臓病、認知症などが重なってくることが珍しくありません。訪問診療では、こうした複数の持病を一人の主治医として続けて診ていきます。ある薬を増やしたときに腎臓にどう響くか、この年齢と生活の状況ならどのあたりを目標にするのが妥当か——そうした全体の兼ね合いを、ご本人・ご家族と一緒に考えられるのが利点だと感じています。数値を下げること自体が目的ではなく、その方が家で過ごす時間をできるだけ穏やかに保つことが目的です。だからこそ、目標の置き方は人によって変わりますし、診察のうえで判断していくことになります。

ひとりで抱えず、チームで長く続ける

慢性の病気とのつきあいは、短距離走ではなく長い道のりです。医師だけで支えられるものではありません。訪問看護に入っていただいて血圧や血糖を定期的に確認していただいたり、薬局に配薬を工夫していただいたり、ケアマネージャーに生活面の変化を教えていただいたり。そうやって役割を分け合っておくと、むくみや息切れといった変化に早く気づけて、大きく崩れる前に手を打ちやすくなります。ご家族が「気になるけれど、これくらいで連絡していいのかな」と迷われる場面でも、日ごろから関わっている人がいると相談の敷居が下がるように思います。

こんなときは、一度ご相談ください

次のような状況に心当たりがあれば、訪問診療という選択肢を思い出していただければと思います。足腰が弱ってきて、通院と待ち時間がこたえるようになってきた。物忘れが出てきて、薬の管理が心配になってきた。持病が増えて通院先がばらばらになっている。ひとり暮らし、あるいは高齢のご夫婦だけの世帯で、何かあったときが不安。病院に行くと疲れきってしまい、しばらく足が遠のいてしまう。訪問診療が向いているかどうかの整理には、外来通院と訪問診療の比べ方もお役に立つかもしれません。

「薬も検査も、もうあきらめるしかない」という状態になる前に、家まで診に来るかかりつけ医という道があることを知っておいていただけたらと思います。当院は札幌市中央区に診療所を置き、札幌市内を中心に訪問診療を行っています。まだ通院できているけれど先々が心配、という段階のご相談でも構いません。

この記事を書いた人
札幌インターナショナルクリニック 院長 吉峰 玲
あわせて読みたい
高血圧を放置するとどうなる?——高齢者の夏の血圧と、家での測り方
高血糖が続くとどうなる?在宅での気づき方と対処——訪問診療医が解説
訪問診療の対象になる人・ならない人とは?——札幌の訪問診療医が具体例で解説

コラム一覧へ戻る

お気軽にご相談ください

「持病はあるけれど、通院が続けられるか心配」というご相談だけでも構いません。
札幌市内を中心に、ご家族・ケアマネージャーの皆様からのご連絡もお待ちしています。
English-speaking staff available. Please feel free to contact us.

お電話でのお問い合わせ

電話番号 011-213-1017

FAX 011-213-1018

受付時間 9:00〜17:00(土日祝除く)/急変時は24時間対応