高血糖が続くとどうなる?在宅での気づき方と対処——訪問診療医が解説
「このごろ、やたらとのどが渇くみたい」「夜中に何度もトイレに起きるようになった」——ご家族から、そんな話をうかがうことがあります。夏場だから水分をとっているせいかな、と見過ごされがちですが、その背景に高血糖がかくれていることがあります。
血糖値が高い状態そのものは、痛みのように分かりやすく訴えてくれるわけではありません。だからこそ、体に出る小さなサインに気づくことが大切になります。今日は、在宅療養のなかでの高血糖の気づき方と、家でできる対処、受診の目安を整理してみます。
高血糖ってどんな状態?
食事からとり込まれた糖(ブドウ糖)は、本来なら血液から体の細胞へ運ばれてエネルギーとして使われます。そのしくみがうまく働かず、糖が血液のなかに余ってしまっている状態が高血糖です。
目標とする血糖値は、年齢や持病、低血糖の起こしやすさによって一人ひとり違います。一般的な目安として空腹時でおおむね130mg/dL前後といった数字が挙げられることもありますが、これはあくまで一例で、ご高齢の方や体調に波のある方では、あえてゆるめに設定することも珍しくありません。数字だけを追いかけず、その方の暮らしに合った落としどころを一緒に決めていくのが在宅での考え方です。
体に出やすいサイン(数時間〜数日)
血糖が高い状態が続くと、体は余った糖を尿と一緒に外へ出そうとします。その結果、次のようなサインが出やすくなります。
- のどが渇く、水をよく飲む
- 尿の量が増える、夜間に何度もトイレに起きる
- 体がだるい、眠気が強い、頭がすっきりしない
- 水分が奪われて脱水ぎみになり、便秘や足のつりが出る
- 傷が治りにくい、皮膚や尿の路のトラブルが起きやすい
どれも「歳のせい」「暑さのせい」と受け止められやすいものばかりです。けれど、こうしたサインがいくつか重なってきたときは、一度血糖の状態を確かめてみる価値があります。
急いで動いてほしい赤信号
血糖がとても高いまま強い脱水が進むと、意識がもうろうとしたり、受け答えがはっきりしなくなったりすることがあります。強い吐き気や腹痛、荒い呼吸をともなう場合もあります。こうした状態は在宅で様子を見てよい段階を越えています。ためらわず当院へご連絡いただくか、状況によっては救急要請を検討してください。夜間に判断を迷ったときの考え方は、夜間の発熱・呼吸苦で救急車を呼ぶ判断目安についての記事もあわせてご覧ください。
放っておくと、どんなことが起きる?
高血糖の本当にやっかいなところは、すぐには困った症状が出にくいのに、時間をかけて体のあちこちに負担をためていく点にあります。数か月から数年という単位で、細い血管にも太い血管にもダメージが積み重なっていきます。
- 目:網膜の血管が傷み、視力の低下につながることがあります
- 腎臓:はたらきが少しずつ落ち、体に老廃物がたまりやすくなります
- 神経:手足のしびれや感覚の鈍さ、立ちくらみなどが出ることがあります
- 太い血管:動脈硬化が進み、心臓や脳の血管の病気の危険が高まります
- 足:傷に気づきにくく治りにくくなり、悪化しやすくなります
逆に言えば、ここに挙げた変化は、早めに気づいて手を打つほど進みをゆるやかにできる部分でもあります。定期的に体の状態を確かめておくことに意味があるのは、このためです。
なぜ上がる?よくあるきっかけ
高血糖は生活のちょっとした変化で揺れます。食事の量や時間の偏り、甘い飲み物、運動不足や睡眠不足、ストレスなどが積み重なって上がることがあります。また、発熱や感染症があると体が糖を多めに作り出すため、風邪をひいたときに数値が乱れることもあります。お薬の飲み忘れや、逆にインスリンの量が体に合わなくなっているときも、血糖は動きます。
血糖を下げるお薬を使っている方では、上がる心配だけでなく、下がりすぎる低血糖にも同じくらい気を配る必要があります。食欲が落ちてきた時期は特に、これまでと同じ量のお薬が効きすぎてしまうことがあるためです。血糖の管理は「下げれば下げるほどよい」ものではなく、高すぎず低すぎない幅にととのえていく作業だと考えていただくと分かりやすいかもしれません。
今日から家でできること
- 糖分の入っていない水やお茶で、こまめに水分をとる
- 主食・主菜・副菜を3食に分け、夜にまとめ食いしない
- 短くてよいので体を動かす回数を増やす(1回10分を数回でも)
- 食事・お薬・体調の変化を簡単にメモしておく
- 毎日、足に傷や靴ずれがないかを見ておく
そのうえで、血糖が高い状態が数日続く、発熱や下痢など感染の症状をともなう、強いのどの渇きや急な体重の減少がある、足の傷が赤く腫れている——こうしたときは、次の受診日を待たずにご連絡ください。インスリンを使っている方や、食欲が落ちてきている方は、体調の変化がそのまま血糖に響きやすいので、早めのご相談が安心につながります。
訪問診療でできること
通院が難しい方でも、血糖の管理は在宅で続けていけます。当院では、ご自宅にうかがっての診察に加え、必要に応じた血液検査や、そのときの体調・食事に合わせたお薬の見直しをご一緒に行っています。訪問看護や薬局とも連携しながら、生活の変化に合わせて無理のない調整を重ねていきます。目や腎臓、心臓などの専門的な評価が必要と判断したときは、適切な医療機関へおつなぎします。
血糖の目標もお薬の内容も、その方の年齢や持病、暮らし方によって変わります。数字を無理に追い込むのではなく、その人らしい毎日を守ることを軸に、ちょうどよいところを探していきたいと考えています。
「のどの渇きが続く」「数値が安定しない」——そう感じたら、質問だけでも構いません。札幌市中央区を中心に訪問診療を行う当院として、状態を確認したうえで、その方に合った次の一手をご提案します。
札幌インターナショナルクリニック 院長 吉峰 玲