訪問診療の対象になる人・ならない人とは?——札幌の訪問診療医が具体例で解説
「うちの母は、訪問診療の対象になるんでしょうか」——ケアマネージャーの方やご家族から、こうしたお尋ねをいただくことがよくあります。返事に迷われる気持ちも分かります。訪問診療という言葉は知っていても、「寝たきりの方が受けるもの」というイメージが先に立ってしまうからだと思います。
実際には、対象になる方の範囲は、思われているよりずっと広いというのが実感です。今日は、訪問診療の対象になりやすい方・なりにくい方を、具体的な場面とあわせて整理してみます。
訪問診療とは——往診・在宅医療との違い
訪問診療は、医師が計画を立てて、月1回や月2回など決まったペースでご自宅や施設へ伺い、診療を継続する仕組みです。これに対して、体調が急に悪化したときに臨時で駆けつけるのが往診です(訪問診療と往診の違いについてはこちらの記事でも詳しく解説しています)。訪問看護やリハビリなども含めた広い枠組みが「在宅医療」で、訪問診療はその中心を担っています。
「対象になるかどうか」は病名では決まりません
お問い合わせをいただく中で感じるのは、「特定の病気があるかどうか」よりも「通院がどれくらい大変か」を基準に考えると、答えが見えてくるということです。訪問診療の対象になる基本条件は、次の2つが重なる場合だと考えています。
- 慢性疾患の管理や褥瘡のケア、認知症、がんの治療・緩和ケアなど、継続的な診療が必要
- 一人での通院が、体力的・認知的・環境的な理由で難しい
「通院できている」ことと「通院が楽である」ことは、実は別の話だという点が、判断のポイントになります。
対象になりやすい方の具体例
実際にお問い合わせをいただく中で多いのは、次のような場面です。
- 車椅子の乗り降りに介助が必要で、外来受診のたびに家族の予定を空けている
- 歩行器を使っていても転倒が怖く、外出そのものが億劫になっている
- 認知症があり、診察室で話がまとまらない、あるいは受診の予定を覚えていられない
- 介護タクシーを利用すれば通院はできるが、往復と待ち時間だけで半日仕事になり、本人もご家族も疲れ切ってしまう
- 在宅酸素や胃ろう、尿道カテーテルの管理など、医療的なケアの比重が大きい
このなかで見落とされがちなのが、介護タクシーで通院できているケースです。「タクシーで行けるなら対象外では」と思われがちですが、移動と待ち時間の負担そのものが、生活の質を大きく削っていることは少なくありません。
対象になりにくい方の例
一方で、次のような場合は、訪問診療よりも外来通院を続けていただくほうが合っていることもあります。
- 一人で無理なく通院でき、体調も安定している
- 「今回だけ薬がほしい」という単発のご相談(訪問診療は継続的な管理が前提のため)
- すでに他の医療機関が訪問診療の主治医として関わっている(制度上、重複して主治医になることは難しいためです)
もっとも、これらも状況によって判断が変わります。最終的には、実際にお話を伺ったうえで、診察を含めて医師が総合的に判断することになります。
迷ったときのチェックリスト
- 通院に付き添いや介助が欠かせない
- 受診のたびに、ご家族が仕事を休んでいる
- 移動や待ち時間だけで体力を使い果たしてしまう
- 認知症などで、診察がスムーズに進まないことがある
- 服薬管理や体調の変化への対応に、継続的な医療の関わりが必要
1つでも当てはまれば、訪問診療を検討する価値があると思います。
対象かどうかは、まず相談してみてください
制度や情報が完璧に揃っていなくても、相談は始められます。当院では、お電話でのお問い合わせをいただいた時点から、ご本人の状態や生活の様子を伺いながら、訪問診療が合いそうかどうかを一緒に整理しています。実際の始め方の流れは、訪問診療の始め方——相談から初回訪問までの記事でも紹介しています。初回訪問で何を行うかについては、診療当日の流れのページもご参照ください。
ケアマネージャー・地域包括支援センターの皆様へ。「この方は対象になるだろうか」と迷う場面があれば、情報が揃っていない段階でもお気軽にご連絡ください。札幌市中央区を中心に、通院が難しくなったご本人とご家族の生活を、医療の面から支えたいと考えています。
札幌インターナショナルクリニック 院長 吉峰 玲
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