夜間頻尿・尿もれ・尿が出にくい——高齢者の尿トラブル、在宅でできること

「夜、何度もトイレに起きるんです」——診察が終わって帰り支度をしていると、玄関先でご家族がぽつりと漏らすことがあります。診察の最中には出てこないのに、最後の最後に出てくる。排泄の話は、それだけ切り出しにくい話題なのだと思います。

けれど尿のトラブルは、ご本人の眠りを削り、夜中の付き添いでご家族の睡眠も削り、暗い廊下での転倒という危険まで連れてきます。「年のせいだから」で片づけるには、暮らしへの影響が大きすぎる。今日は、夜間頻尿や尿もれ、尿が出にくいといった悩みを、在宅ではどこまで診られるのかを整理してみます。

夜間頻尿は「膀胱だけの問題」ではありません

夜中に何度も起きる——そう聞くと、膀胱が小さくなったせい、年を取ったせい、と考えがちです。ところが実際にお話を伺うと、原因が膀胱の外にあることが少なくありません。

たとえば、日中に足にたまった水分が、横になった夜のあいだに血管へ戻り、尿としてまとめて作られる。心臓や腎臓の働きの低下、眠りの浅さ、寝ているあいだの呼吸の乱れ。むくみをとるお薬(利尿薬)を夕方に飲んでいる、というように服薬の時間帯が効いていることもあります。血糖が高い状態が続いているときにも、尿の量は増えます(この点は高血糖のサインの記事にまとめました)。

ですから在宅では、まず「いつ・どのくらい・どんなときに」を伺うところから始めます。夕方の足のむくみ具合、寝る前の水分やお茶・コーヒーの量、就寝と起床の時刻、お薬を飲む時間。ご家族やヘルパーさんが日ごろ見ている様子が、そのまま大きな手がかりになります。

尿もれ・尿が出にくい——タイプによって対処が変わります

ひとくちに尿もれといっても、急に強い尿意がきて間に合わないかたちと、咳やくしゃみのはずみで漏れるかたち、そして尿を出しきれずに少しずつあふれてくるかたちとでは、背景がまるで違います。とくに気をつけたいのは最後のかたちで、男性では前立腺が大きくなっていること、どなたでも便秘や飲んでいるお薬が関係していることがあります。

「もれるのが心配だから水分を控えている」というお話も、よく伺います。お気持ちはよくわかるのですが、水分が足りないと尿が濃くなって膀胱を刺激し、かえって回数が増えることがあります。夏場であれば室内の熱中症という別の危険も重なる。だからこそ、水を減らす前に一度、原因のほうを見に行きたいのです。

在宅でできること——尿検査・採血と、お薬の整理

訪問診療では、その場で採尿して尿検査を行えます。細菌や血液の混じり、糖やたんぱくの有無を確かめ、必要に応じて採血で腎臓の働きや電解質、血糖の状態もあわせて見ます。検査は検査会社を通すため結果の共有は翌営業日以降が原則ですが、急ぎの所見が出たときはその日のうちにご連絡します。家で受けられる検査の範囲は訪問診療でできる検査の記事に詳しく書きました。

そのうえで、いちばん手をつけやすいのはお薬と暮らしのリズムです。利尿薬を飲む時間帯を朝寄りに寄せる、夕方に足を高くして休む時間をつくる、寝る前のカフェインやお酒を控える、その代わり日中の水分はしっかりとる——この調整だけで夜の回数が減る方もいます。逆に、飲んでいるお薬そのものが排尿を妨げていることもあるので、お薬手帳を一緒に開いて全体を眺め直します。

一方、超音波などの機器を要する検査や、専門的な治療が必要と判断したときは、提携する医療機関へおつなぎします。尿道カテーテルを使っている方の管理をどうするかも、状態とご希望を伺ったうえで、診察のなかで相談させてください。在宅ですべてを完結させることが目的ではなく、ご本人の負担がいちばん小さい道を選ぶことが目的です。

こんなときは、早めにご連絡ください

尿の悩みの多くはゆっくり相談していけるものですが、急ぎたい場面もあります。尿がまったく出ず、下腹部が張って苦しそうなとき。高い熱と、背中や脇腹の痛みが重なるとき。血の混じった尿が続くとき。そして高齢の方では、急にぼんやりして受け答えが鈍くなる形で、尿路の感染が表に出てくることもあります。

いつもと違う、と感じたら、まずはお電話ください。判断に迷うときの目安は救急車を呼ぶべきかの記事に、夜間や休日の動き方は往診の仕組みにまとめています。訪問診療が入っていれば、「救急車か、朝まで様子見か」の二択で悩む必要はありません。

排泄の話は、暮らしの話です

尿の悩みを打ち明けるのは、ご本人にとって勇気がいることです。恥ずかしさから話せないまま、外出を控え、水分を控え、活動の範囲が少しずつ狭くなっていく——そういう経過を何度も見てきました。だから私たちは、こちらから排泄のことを伺うようにしています。聞かれたほうが話しやすい、という声を、これまでたくさん頂いてきました。

ご本人が言い出しにくければ、ご家族やケアマネージャーの皆様から教えていただくかたちでも構いません。札幌市中央区を中心に訪問診療を行う当院では、「夜のトイレの回数が増えた気がする」という程度のご相談からお受けしています。暮らしの中身に合わせて、無理のない見直しを一緒に考えます。

この記事を書いた人
札幌インターナショナルクリニック 院長 吉峰 玲
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