訪問診療でできること・できないこと——在宅医療の範囲をわかりやすく解説
「訪問診療って、家に来て具体的に何をしてくれるんですか」。初めてお問い合わせをいただく方から、よくこう尋ねられます。在宅医療は病院をまるごと自宅に持ってくるような万能の仕組みではありませんが、想像されているよりもできることは多くあります。今日は訪問診療の「できること」と「できないこと」を、できるだけ具体的に整理します。
訪問診療でできること
定期的な診察と健康管理
血圧・脈拍・酸素飽和度などのバイタルチェックに加え、発熱や食欲低下、むくみ、息切れといった体調変化の評価、高血圧や糖尿病、心不全といった慢性疾患の継続的な管理を行います。転倒の有無や排泄、睡眠、栄養状態といった生活の様子もあわせて確認します。
お薬の処方と整理
内服薬の処方はもちろん、飲み合わせや重複のチェック、必要に応じた減薬のご提案も行います。服薬管理が難しい方には、剤形の変更や薬局との連携など、実際に続けやすい形を一緒に考えます。
在宅でできる検査
採血、尿検査、心電図などは自宅で行うことができます。診察の内容によって、その場でできる範囲の検査を組み合わせ、必要な情報を集めます。
点滴・注射などの処置
脱水時の点滴や、状態に応じた皮下注射・筋肉注射などの処置に対応します。褥瘡(床ずれ)などの創部処置も、状態を見ながら行います。対応できる処置の範囲は、診察のうえで個別に判断しています。
24時間の連絡体制
当院は受付時間外であっても、急変時は24時間対応しています。夜間・休日の電話相談から、必要に応じた緊急往診まで対応する体制を整えています(退院後の在宅療養についてのページも参考にしてください)。
看取り・緩和ケア
住み慣れたご自宅で療養を続けたいという希望に沿って、痛みや呼吸苦などの症状を和らげながら、ご本人・ご家族の意思決定を支えます。看取りの時期には、訪問看護とも連携しながら対応します。
多職種との連携
ケアマネージャーとの情報共有、訪問看護指示書の作成、主治医意見書の作成など、介護と医療をつなぐ役割も担います。
訪問診療で「できないこと」「難しいこと」
その場で完結する高度な検査
CTやMRI、内視鏡といった大がかりな検査は、自宅では行えません。必要と判断した場合は、連携する医療機関への受診や入院の手配を行います。
「単発で薬だけ」という依頼
訪問診療は継続的な管理が前提の医療です。「今日だけ薬がほしい」といった単発の依頼には、趣旨が異なるためお応えできない場合があります。
すでに他院が主治医として関わっている場合
すでに別の訪問診療クリニックが主治医として入っている状態への重複した介入は、制度上難しいことがあります。主治医を切り替えたい場合は、まずご相談ください。かかりつけ医がいる場合の考え方もあわせてご覧ください。
すべての緊急要請に「即」対応できるわけではない
24時間の連絡体制は整えていますが、状況によっては往診より救急搬送が優先される場合もあります。まずは電話でご状況を伺い、往診が適切か、119番が適切かを一緒に判断します。夜間の判断目安は別の記事で解説しています。
生活の介助そのもの
食事や入浴、排泄の介助といった生活面の支援は、介護サービスの領域です。訪問診療は医療の側面を担い、必要に応じてケアマネージャーと連携して生活支援と組み合わせます。
「うちの場合はどうだろう」と思ったら
できること・できないことは、ご本人の病状や生活環境によって変わってきます。「これは家でお願いできる?」と迷ったときほど、まずお電話で状況を聞かせてください。訪問診療の対象になる方についてはこちらの記事、費用の目安はこちらの記事、診療のご案内もあわせてご覧いただけます。
訪問診療は、病院の代わりに「何でも」する医療ではありません。それでも、通院が難しい方が生活を続けながら必要な医療を受けるために、できることはたくさんあります。札幌市中央区を中心に、医療と介護を含めた現実的な選択肢を一緒に整理します。
札幌インターナショナルクリニック 院長 吉峰 玲