かかりつけ医がいる場合の訪問診療——併診・紹介はどう考える?
「長く診てもらっている先生がいるけれど、通院がだんだんつらくなってきた。かかりつけの先生を変えたくないのに、訪問診療は頼めるのでしょうか」。こうしたご相談は少なくありません。結論からお伝えすると、かかりつけ医がいるからといって訪問診療を利用できないわけではありません。ただし在宅では「誰が主治医として継続的に診るか」という役割分担を、あらかじめ整理しておく必要があります。
在宅では「主治医」をどちらにするかがポイントになる
訪問診療は、単発で呼ぶ往診とは違い、継続的に体調管理を行うことが前提の医療です。そのため在宅に切り替えるときは、これまでのかかりつけ医と、新しく関わる訪問診療医のどちらが主治医として継続管理を担うのかを、最初に決めておくことが大切になります。
いちばん多いのは「紹介」で主治医を引き継ぐパターン
通院が難しくなってきた、薬の調整や体調の変化が多くなってきた、というときには、かかりつけ医から紹介状(診療情報提供書)をいただき、当院が主治医として引き継ぐ形がもっともスムーズです。主治医意見書についての記事でも触れていますが、紹介状があると、これまでの経過や本人・ご家族の希望が伝わりやすく、初回の訪問から診療の精度が上がります。紹介状が手元にない場合の対応はこちらの記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
「併診」ができる場合、難しい場合
かかりつけ医を続けたいというお気持ちは、とても自然なものです。専門外来(循環器や神経内科など)を継続しながら、日常の体調管理は訪問診療が担う、という役割分担であれば併診が成立しやすいと考えています。
一方で、同じ内科領域で両方の医療機関が薬を出したり方針を決めたりする形は、責任の所在があいまいになりやすく、診療報酬の仕組みのうえでも両立しづらい場合があります。「とりあえず両方に診てもらう」という進め方は、後々の混乱につながることがあるため、当院では役割を明確にしたうえでの併診をおすすめしています。個別の状況によって成立するかどうかは変わるため、診察のうえで一緒に判断させてください。
紹介は「関係を切ること」ではありません
かかりつけ医を訪問診療に紹介することは、これまでの関係を断ち切ることではないと考えています。長年診てきていただいた経過や、本人の性格・価値観といった情報は、在宅での診療でもとても大切な手がかりになります。紹介状に、病名やお薬だけでなく、これまで大事にしてきたことや急変時の注意点が書かれていると、当院としても引き継ぎがぐっとやりやすくなります。
家族ができる準備
- 「通院が難しい理由」を具体的に伝える(雪道での移動が大変、付き添いの負担が大きい、受診後に疲れて寝込むなど)
- お薬手帳、直近の検査結果、紹介状があれば持参する
- 主治医をどちらにするか、迷ったら遠慮なくご相談ください
訪問診療をどう始めるか迷う段階の方は、かかりつけ医の作り方についての記事もあわせてご参考にしてください。
「うちはどの形が良いだろう」は、病状・通院の状況・ご本人の希望によって変わります。かかりつけ医がいる方の在宅移行も含めて、現実的な形を一緒に考えます。お気軽にご相談ください。
札幌インターナショナルクリニック 院長 吉峰 玲