高齢者の帯状疱疹——発疹より先に来る痛みのサインと、早めに相談してほしい理由

「背中の右側だけ、なんだかピリピリするんです」。訪問診療をしていると、こういう言い方の痛みに時々出会います。見た目には何も出ていない。押しても特に痛くない。ご本人は「寝違えたかな」とおっしゃり、ご家族も湿布を貼って様子を見る——ごく自然な流れだと思います。

ただ、この「見た目に何もないのに、片側だけがピリピリする」という訴えを聞いたとき、私は帯状疱疹の可能性を頭の隅に置いておくようにしています。数日たってから、まさにその同じ場所に赤い発疹が並んで出てくることがあるからです。今日は、ご家族やケアマネージャー・訪問看護の皆様に知っておいていただきたい帯状疱疹の見つけ方について、書いてみます。

片側だけ

帯状疱疹とは——水ぼうそうのウイルスが、何十年もあとに動き出す

帯状疱疹は、子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが原因です。水ぼうそうが治ったあとも、ウイルスは体の神経の根元にじっと潜んでいます。多くの場合はそのまま静かにしているのですが、加齢や疲れ、ほかの病気などで体の抵抗力が落ちたときに、また動き出すことがあります。

動き出したウイルスは神経に沿って進むので、症状も神経の通り道に沿って出ます。これが「体の片側に、帯のように」という帯状疱疹らしい出方の理由です。高齢の方に多いのは、加齢とともにこのウイルスを抑えこむ力がゆるやかに下がっていくためで、けっして不摂生の結果ではありません。ご本人が「自分の不注意でしょうか」と気にされることがありますが、そういう病気ではないとお伝えしています。

高齢の方で見つけにくい理由——痛みが先、発疹が後

やっかいなのは、痛みのほうが先に出ることが多い点です。発疹が出る数日前から、ピリピリ・ジンジン・ズキンとした痛みだけが続きます。この段階では見た目に手がかりがないので、腰痛や神経痛、寝違え、あるいは肋間神経痛として様子を見られてしまうことがあります。

そのうえ在宅では、ご本人が痛みをうまく言葉にできない場面もあります。認知症のある方の場合、痛いとおっしゃらない代わりに、次のような形でサインが出ることがあります。

  • 着替えのとき、片方の袖を通すのを急に嫌がるようになった
  • 体を拭こうとすると、特定の場所だけ手で払いのける
  • 夜中に落ち着かない、寝返りのたびに顔をしかめる
  • 理由がはっきりしないまま、食欲や元気が落ちている

ヘルパーさんや訪問看護師さんが「今日はここを触られるのを嫌がりました」と教えてくださって見つかることは、実際によくあります。介護の現場で毎日体に触れている方の気づきは、それだけで立派な診療情報だと思っています。

こんな出方をしていたら、帯状疱疹を疑います

発疹が出てきたときは、次のような特徴があるかを見ていただけると判断が早くなります。

  • 体の片側だけに出ている——左右そろっては出にくく、背骨のあたりを境に片側にとどまることが多い
  • 帯のように並んでいる——ぽつぽつとした赤みが、神経の走行に沿って線状・帯状にかたまる
  • 赤み→水ぶくれ→かさぶた、と変わっていく——数日のうちに見た目が変化していく
  • 同じ場所が痛い——発疹の出ている場所と、先に痛かった場所が一致する

もちろん、湿疹やかぶれ、汗もなど、ほかの皮膚トラブルとまぎらわしいこともあります。写真を撮って送っていただければ、それだけで判断がつくこともあります。

痛みだけ 発疹が出る 早めに相談 数日 ここが大事

早めに相談してほしい理由——あとに残る痛みを、できるだけ小さく

帯状疱疹には、ウイルスの勢いを抑えるお薬があります。このお薬は、発疹が出てから早い時期——おおむね72時間以内に飲み始めるのが望ましいとされています。時間が経ってからでも治療をしないわけではありませんが、早い段階のほうが選択肢を取りやすいのは確かです。

もう一つ、高齢の方で気にかけているのが帯状疱疹後神経痛です。発疹そのものがおさまったあとも、その場所の痛みやしびれが長く続くことがあり、年齢が上がるほど残りやすいと言われています。痛みが続くと、眠れない、動きたくない、食欲が落ちる、と生活のほうが先に細っていきます。在宅で診ていて怖いのは、発疹そのものよりむしろこちらのほうです。

だからこそ、「たぶん違うと思うんですけど」という段階の連絡が助かります。空振りでまったく構いません。皮膚を診て違うとわかれば、それはそれで一つ心配が減ります。

目のまわり・耳のまわりは、とくに急いでください

帯状疱疹はどこにでも出ますが、出た場所によって注意の度合いが変わります。

  • おでこから目のまわり、鼻すじ——目に症状が及ぶことがあり、見え方に関わる場合があります
  • 耳のまわり、耳のなか——顔の動かしにくさ、めまい、耳鳴りや聞こえにくさをともなうことがあります

この二つの場所は、様子を見る時間をなるべく取りたくないところです。目や耳のまわりに発疹が出ている、あるいは顔が動かしにくい・見えづらい・強いめまいがあるといったときは、時間帯を気にせずご連絡ください。当院の患者さんであれば、状況によって眼科・耳鼻科の医療機関へおつなぎする判断も含めて考えます。

目と耳のまわりは急いで

在宅では、どこまで診られるのか

帯状疱疹は、多くの場合ご自宅で診ていくことができます。当院が訪問して行っているのは、おおむね次のようなことです。

  • 発疹と痛みの場所を診察し、ほかの皮膚トラブルと見分ける
  • ウイルスに対するお薬を、腎臓の働きなどを踏まえて選ぶ・量を調整する
  • 必要に応じて採血などの検査を行い、体の状態を確かめる
  • 痛みに対するお薬を組み立て、効き具合を見ながら調整する
  • 皮膚の手当ての方法をお伝えし、訪問看護と経過を共有する

お薬の種類が増えることをご心配される方もいらっしゃいますが、ここは飲み合わせを見ながら整理していく部分です。お薬の管理そのものが負担になっている場合は、薬剤師さんに入っていただく方法もあります。

一方で、痛みが非常に強くて生活が立ちゆかないとき、食事や水分が取れなくなってきたとき、目や耳に症状が及んでいるときなどは、ご自宅にこだわらず病院での対応をご提案することがあります。どこで診るのがその方にとって良いかは、そのつど一緒に考えます。

まわりの人にうつりますか、というご質問

これはよくいただく質問です。帯状疱疹そのものが人から人へうつるわけではありませんが、水ぶくれの中にはウイルスがいます。水ぼうそうにかかったことのない方や、水ぼうそうのワクチンを受けていない小さなお子さんが接触すると、水ぼうそうとして発症することがあります。妊娠中の方や、治療などで体の抵抗力が下がっている方も同様に、接触は避けていただくほうがよい状況です。

とはいえ、日常の介護を止める必要はありません。水ぶくれをガーゼや衣服で覆っておく、手洗いをする、タオルを共用しない——このあたりを守っていただければ十分なことがほとんどです。かさぶたになれば、うつる心配はほぼなくなります。同居のご家族に小さなお子さんや妊娠中の方がいらっしゃる場合は、診察のときに教えてください。過ごし方を具体的にご相談します。

予防のワクチンについて

帯状疱疹には予防のためのワクチンがあります。2025年度からは高齢の方を対象とした定期接種の枠組みが始まり、対象年齢や助成の内容は自治体ごとに定められています。札幌市にお住まいの方は、市や各区の保健センターの案内をご確認いただくのが確かです。

接種を受けられるかどうかは、持病や現在の治療内容によっても変わります。ワクチンの種類によって、体の抵抗力が下がっている方には向かないものもありますので、判断は診察のうえで行うことになります。ご関心があれば、どこで受けられるかを含めて、かかりつけの医療機関にご相談ください。

「これくらいで連絡していいのかな」の、その手前で

在宅の現場で私がいちばんもったいないと感じるのは、痛みだけの数日間を、誰にも言わずに過ごしてしまうことです。帯状疱疹は、早い段階で手を打てるかどうかで、そのあとの過ごしやすさが変わってくる病気だと思っています。

「片側だけがピリピリする」「服がこすれるだけで痛がる」——このくらいの、まだ何とも言えない段階のお話で構いません。札幌市中央区を中心に訪問診療を行う当院では、ご本人からもご家族からも、そしてケアマネージャー・訪問看護・地域包括支援センターの皆様からのご連絡もお待ちしています。どこに相談すればよいか迷ったときは、困りごと別・相談先の早見ガイドもご覧ください。

この記事を書いた人
札幌インターナショナルクリニック 院長 吉峰 玲
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