お盆に実家へ帰ったら、親の様子が少し違った

お盆が近づくと、今年もこの時期がきたか、と思います。道外で暮らすお子さんやお孫さんが、久しぶりに実家の玄関を開ける季節です。訪問診療をしていると、お盆や年末年始が明けたころに「帰省して親に会ったら、様子がちょっと変わっていて驚いた」というお話を、ご家族からよく伺います。今日は、その「ちょっとした違和感」について書いてみようと思います。

玄関を開けた瞬間に、なんとなく感じること

電話やビデオ通話では伝わらないことが、実家に着いた瞬間にわかることがあります。歩くスピードが少しゆっくりになっていたり、玄関から居間までの間に、何かにつかまる仕草が増えていたり。台所に立ってみると、食卓に並ぶ品数が減っていたり、同じお総菜が何日分も冷蔵庫に残っていたりします。消費期限の切れたものがそのままになっていることに気づく方もいますし、棚のお薬カレンダーに、飲み忘れらしき空白が点々と残っていることもあります。家の中がどことなく片づいていない、といった暮らし方の変化も、意外と見過ごされがちなサインです。

「年のせい」で片づけないために

こうした変化に気づいたとき、「もう歳だから仕方ない」で片づけてしまいたくなる気持ちは、よくわかります。誰しも、親の老いをまっすぐ見つめるのは簡単ではありません。ただ、日々の診療で感じているのは、「なんとなくおかしいな」というご家族の直感は、わりと当たっているということです。歩き方の変化の裏に関節や神経の問題が隠れていることもあれば、食欲の低下の裏に、飲み込みにくさやお薬の影響、あるいは気持ちの落ち込みが隠れていることもあります。もちろん、暑さや一時的な体調不良によることも少なくありません。大切なのは「年のせい」で終わらせず、次に会うまでの間、少し気にかけておくことだと思います。

気になったときに、頼っていい相談先

「これくらいで相談していいのだろうか」と迷って、結局そのまま帰ってしまう方も多いのではないでしょうか。ですが、迷った時点で相談していただいて大丈夫です。まずは、かかりつけの先生に気づいたことをそのまま伝えてみてください(かかりつけ医の作り方も参考にしてみてください)。まだかかりつけの医療機関がなければ、お住まいの地域の地域包括支援センターに連絡すると、介護と医療の両面から相談に乗ってもらえます。「どこに相談したらいいかわからない」という段階でも、困りごと別の相談先の目安を参考にしていただければと思います。もし外来への通院そのものが難しくなっているようであれば、訪問診療という選択肢もあります。当院も札幌市内を中心に、そうしたご相談をお受けしています。

遠くに住んでいてもできること

道外に住んでいると、「そばにいられないのに、何ができるのだろう」と感じてしまうかもしれません。ですが、遠方からでもできることは意外とあります。まずは、気づいたことをそのまま、かかりつけの先生やケアマネージャーに伝えること。「この前帰ったとき、こんな様子でした」という一言だけでも、支援する側にとっては大事な手がかりになります。電話やビデオ通話の頻度を少し増やして、声の張りや会話のかみ合い方を気にかけておくのもひとつの方法です。そして、次に帰省したときに、また同じところを見てみること。一度の帰省では判断がつかなくても、変化の向きがわかれば、次の一手を考えやすくなります。

今年のお盆、実家の玄関を開けたときに、もし何か「あれ」と思うことがあったら、それは見過ごさなくていいサインかもしれません。ひとりで抱え込まず、専門職の力も借りながら、少しずつ確かめていっていただければと思います。

この記事を書いた人
札幌インターナショナルクリニック 院長 吉峰 玲
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