施設入居者の通院負担をどう減らす?——付き添い・待ち時間・体調への影響を訪問診療で見直す【保存版】
サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームを回っていると、通院の予定表がびっしり埋まった月間カレンダーを見せていただくことがあります。内科、皮膚科、整形外科と、通う先が違えばそのたびに車を出し、職員が付き添い、待合室で長い時間を過ごす。ご本人にとっても職員にとっても、一日仕事になっていることが少なくありません。
今日は、施設に入居されている方の「通院そのものの負担」を、訪問診療でどこまで、どんなふうに軽くできるのかを整理してみます。ケアマネージャーの皆様、施設の職員の皆様、そしてご家族に向けて、保存版のつもりで書きました。
「施設だから通院しなくていい」わけではありません
特別養護老人ホームには配置医師という仕組みがあり、医療の関わり方が少し特殊です。けれど、サービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホーム、グループホームといった施設の多くは、医療の面では在宅にお住まいの方とほとんど変わりません。高血圧や糖尿病の定期フォロー、皮膚のトラブル、体調の変化があれば、これまでどおり外来に通うか、訪問診療に切り替えるかを選べる立場にあります。
だからこそ「施設に入ったから通院は施設まかせ」とはならず、通院の負担は入居後もそのまま残っていることが多いのです。むしろ移動そのものが以前より大変になっている分、負担は重くなっているケースもあります。
通院一回にかかっているものを、分解してみる
「通院」とひとことで言っても、実際にかかっている負担はいくつも重なっています。
- 車椅子からの車への乗り移り、車内での固定、到着後の乗り降り
- 受診の付き添いにあたる職員一人〜二人分の、往復と待ち時間を含めた稼働
- 慣れない場所・慣れない音・長い待ち時間による、ご本人の不穏や疲労
- 問診票の記入や、これまでの経過・お薬内容を毎回説明し直す手間
- 他の入居者様のケアが手薄になる時間帯の発生
特に認知症のある方にとって、待合室での長時間の座位や慣れない環境そのものが、体調を崩すきっかけになることがあります。通院の目的は体調を整えることのはずなのに、通院そのものが負担になってしまう。この矛盾を、現場で感じている職員の方は多いのではないでしょうか。
訪問診療に置き換えられること、置き換えられないこと
訪問診療で担えるのは、主に日常的な内科的フォローです。高血圧・糖尿病・心不全などの慢性疾患の管理、発熱や体調不良時の診察、褥瘡や皮膚トラブルの処置、採血による経過確認、脱水や体調不良時の点滴などは、居室やご自宅に伺って行うことができます。お薬の調整も、その場でお体の状態を見ながら行えるのが訪問診療の強みです。
一方で、専門的な画像検査や、当院では対応できない専門科の処置が必要な場合は、これまでどおり提携する専門医療機関へご紹介します。すべての通院がゼロになるわけではなく、「毎月・毎週の定期的な通院」を「定期的な訪問診療」に置き換えることで、外に出る回数そのものを減らしていく、というのが実際に近い姿です。どこまでを訪問診療で担えるかは、入居者様の状態や施設の体制によって変わりますので、診察のうえで個別にご相談させてください。
施設側で整えておくと、運びやすくなること
訪問診療を導入する施設にお伺いする中で、最初に整えていただくとその後がぐっと楽になる点がいくつかあります。
- 診療日を月間予定にあらかじめ固定する——曜日と時間帯を決めておくと、他の予定と重なりにくくなります
- 緊急時の連絡順を明文化する——施設からまず訪問看護へ、必要に応じて医師へ、という流れを職員間で共有しておきます
- 持参薬・既往歴の情報を一つにまとめる——毎回同じ説明を繰り返さずに済み、急な体調変化のときにも役立ちます
- ご家族への報告のタイミングを決めておく——診察の内容や方針の変化を、定期的にお伝えする窓口を一本化します
これらは特別な設備がなくてもすぐに始められることばかりです。導入の際は、当院からも施設の体制に合わせて相談させていただいています。
ご入居者・ご家族にとっての変化
通院の回数が減ることで、まずご本人の体力的な負担が軽くなります。住み慣れた居室で、いつもの椅子やベッドで診察を受けられることも、認知症のある方にとっては安心材料になります。ご家族にとっても、付き添いのために仕事を休む頻度が減り、診察の内容は訪問のたびに直接、あるいは施設を通じてお伝えできるので、様子が分かりにくくなる心配も小さくなります。
職員の皆様にとっては、付き添いにあてていた時間を他の入居者様のケアに使えるようになる、という変化があります。すべての通院がなくなるわけではありませんが、「毎回大がかりな外出」から「決まった時間に医師が来る」に変わるだけで、月あたりの負担感はかなり違ってくるはずです。
費用の考え方
訪問診療は医療保険の対象で、状態によっては介護保険と組み合わせてご利用いただきます。施設側の送迎や付き添いにかかっていた人件費・手間は不要になりますし、ご本人・ご家族の実際の自己負担については、お一人おひとりの保険の種類や状態によって変わりますので、ご相談の際に個別にご案内しています。
まずは、いまの通院予定表を見せてください
訪問診療への切り替えは、すべてを一度に変える必要はありません。今の通院予定表を見ながら、どこを訪問診療に置き換えられそうか、どこは引き続き外来にお願いするか、一緒に整理するところから始められます。対象になるかどうかの考え方も、病名だけでは決まりません。まずは施設の状況とご本人の状態をお伺いするところからです。
札幌市中央区を中心に、サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームからのご相談もお受けしています。「うちの施設でもできるのか」というご相談だけでも構いません。
札幌インターナショナルクリニック 院長 吉峰 玲
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