訪問看護に何を頼める?——回数の決め方と、医師と噛み合わせる使い方
担当者会議の席で、「訪問看護は、とりあえず週一回でいいですかね」という言葉を聞くことがあります。悪い決め方ではありません。ただ、その「とりあえず」の裏側に、訪問看護に何をどこまで頼めるのかが共有されていない——そういう場面が、正直なところ少なくないように思います。
訪問看護は「処置をしに来てくれる人」と受け取られがちです。実際にはもっと守備範囲が広く、そして訪問診療と組み合わせたときに、いちばん力を発揮します。今日は、ケアマネージャーの皆様やご家族に向けて、訪問看護に頼めることの中身、回数の考え方、そして医師との情報のやりとりが噛み合うためのコツを整理してみます。役割そのものの違いについては訪問看護と訪問診療の違いをまとめた記事もあわせてどうぞ。
訪問看護に頼めることは、思っているより広い
ご家族から「うちは点滴もしていないので、訪問看護は必要ないですよね」と言われることがあります。処置の有無だけで判断すると、もったいないことが起こります。看護師がご自宅に上がって行っていることを並べると、だいたい次のようになります。
- 体の状態をみる——血圧・脈・体温・酸素の値、むくみ、呼吸の様子、食事と水分の量、便通。数字と見た目の両方から変化を拾います
- 医療的な処置——傷や褥瘡の手当て、カテーテルやストマまわりの管理、在宅酸素の確認、医師の指示にもとづく点滴や注射
- お薬の管理——飲み忘れがないか、残薬がどれくらいあるか。合わないと感じる症状が出ていないかを確かめ、医師に伝えます
- 体を動かす・食べることの支え——起き上がりや移乗の助言、飲み込みや口の中の状態の確認
- ご家族への助言——介護のやり方、夜に不安になったときの連絡先の整理、これから起こりうることの説明
最後のご家族への助言は、数字に残らないぶん見落とされがちですが、在宅療養が続くかどうかを左右する部分だと感じています。「この症状が出たらどうしたらいいのか」が分かっているご家庭は、夜の電話の声からして落ち着きが違います。
なお、訪問看護は当院とは別の訪問看護ステーションが提供するサービスです。当院は主治医として訪問看護指示書を出し、報告を受けながら方針を一緒に決めていく立場になります。
「週何回にするか」は、状態のほうが決めてくれます
回数は最初にきっちり決め込まなくて大丈夫です。むしろ、状態に合わせて動かせることのほうが大事だと思っています。目安として、こんな考え方をしています。
- 状態が落ち着いていて、様子を定期的にみておきたい段階なら、週一回から
- 退院した直後、お薬が変わった直後、傷の処置がある——このあたりは頻度を上げたい時期です
- ご家族が介護に慣れていない立ち上がりの時期も、しばらく手厚くしておくと後が楽になります
- 状態が変わったら、そのつど見直す。減らす方向の相談ももちろんできます
介護保険と医療保険のどちらを使うかで回数の制限が変わってきますが、ここはケアマネージャーの皆様と訪問看護ステーションの側で調整していただく部分が大きいところです。
そして、終末期や退院直後など「一時的にどうしても頻回に入ってほしい」時期には、特別訪問看護指示書という手があります。この書類が出ている期間は医療保険の扱いになり、連日の訪問も可能になります。使える場面かどうか迷ったら、遠慮なく主治医に聞いてみてください。制度の存在を知らないまま、介護保険の枠内で我慢してしまっているケースを時々見かけます。
医師と噛み合わせるための、小さなコツ
訪問看護と訪問診療がうまく噛み合っているご家庭には、共通点があります。連携ツールを何にするかよりも、次のような地味なところが効いている印象です。
「どうなったら連絡するか」を、最初に決めておく
これがいちばん大きいと思います。血圧が何mmHgを下回ったら、体重が何kg増えたら、食事が何割を切る日が続いたら——患者さんごとに線を決めておくと、看護師さんは迷わず電話をくださいますし、こちらも「その連絡が来た」というだけで状況が読めます。線が決まっていないと、遠慮して連絡が遅れるか、逆に判断を全部こちらに預けることになってしまいます。
数字と、そのときの様子をセットで
「熱が三十七度八分」だけより、「三十七度八分、でも本人はいつもどおり座って話している」のほうが、はるかに判断ができます。逆に「熱は平熱だけれど、朝から一度も目を開けない」のような、数字が正常なのに様子が違うという情報は、こちらが最も欲しいもののひとつです。
迷った時点で、迷ったまま連絡していい
まとまってから連絡しよう、と思ううちに時間が経ってしまうのがいちばんもったいない。「うまく言えないのですが、なんとなく先週と違います」で構いません。その一報で訪問の順番を組み替えたことは何度もあります。
看取りが視野に入る時期は、早めに足並みを揃える
ご本人とご家族がどうしたいと考えているのか、どこまでの処置を望んでいるのか。ここが医師と看護師とでずれていると、いざというときにご家族が混乱します。方針は変わっていいものなので、変わったら共有する。それだけで最期の時間の質が変わります。
頼みたいと思ったときの流れ
「訪問看護を入れたい」となったとき、ご家族が最初にどこへ連絡すればいいのか分からず止まってしまうことがあります。実際はどこから入っても大丈夫です。
- 介護保険を使っている方は、まず担当のケアマネージャーへ。ステーション探しとケアプランへの位置づけを進めてもらえます
- 担当のケアマネージャーがいなければ、お住まいの地域包括支援センターへ。あるいは当院に直接お電話いただいても構いません
- ステーションが決まったら、主治医が訪問看護指示書を発行します。当院が主治医であればこちらで用意します
- 初回訪問で、ご本人の状態と生活の様子を看護師が確認し、訪問の頻度や内容を具体的に決めていきます
暮らしを見ている人が、二人いるということ
訪問診療で伺えるのは、多くの場合は月に一度か二度です。そのあいだの日々を見てくださっているのが訪問看護の皆さんで、私たちはその目を通して患者さんの生活を知ります。診察室で得られる情報とは、質がまるで違います。
「先生が来る日は、なぜかいつも調子がいいんですよ」と看護師さんに笑って言われたことがあります。ご本人が構えてしまうからですが、その裏側にある普段の姿を教えてもらえるのは本当にありがたい。訪問看護を「使う」というより、同じ患者さんを別の角度から見ている仲間が増える、という感覚に近いのだと思います。
札幌市中央区を中心に訪問診療を行う当院では、地域の訪問看護ステーションの皆様と連携しながら、ご自宅や施設での療養を支えています。訪問看護をどう組み合わせたらいいか迷っている段階のご相談でも構いません。どうぞお気軽にご連絡ください。
札幌インターナショナルクリニック 院長 吉峰 玲