多職種連携のICTツール、結局なにが正解?——訪問診療の現場で今、実際にしていること

在宅医療にかかわる皆様となら、一度は「ICTツールって結局どれがいいんでしょうね」という話題になったことがあるのではないでしょうか。ケアマネージャーの事業所ごとに使っている連絡アプリが違う、訪問看護ステーションはまた別の仕組みを使っている、医療機関によって対応もまちまち——そんな噛み合わなさを、地域の連携の場でよく見聞きします。

在宅医療・介護の現場は、医師と看護師だけで完結するものではありません。ケアマネージャー、薬局、訪問看護、リハビリ、施設の職員、地域包括支援センター——関わる人が増えるほど、連携の質がそのままご本人・ご家族の安心につながります。だからこそ「情報共有の手段」は、現場にとって切実なテーマです。今日は、その手段について、当院がいま実際にしていることと、正直に考えていることを書きます。

多職種連携のためのICTツール、選択肢は増えている

ここ数年で、多職種連携を目的にした情報共有の仕組みは種類が増えました。既読・未読が分かるチャット形式のもの、患者さんごとに記録を積み上げていくクラウド型のもの、施設や事業所間で掲示板のように使えるものなど、性格の異なるツールがいくつも並んでいます。

便利そうに見える一方で、「結局どれが正解なのか」は、正直なところ誰にとっても分かりにくい問題だと思います。事業所ごとに使っているシステムが違えば、結局は一番不便な方法に合わせて連絡することになりますし、新しいツールを一つ増やすたびに、確認する画面が一つ増えるという負担も生まれます。

当院がいま実際にしている連携のかたち

当院では、ケアマネージャー・訪問看護・地域包括支援センター・施設の皆様との連絡は、電話とFAXを軸にしています。目新しさはありませんが、次のような理由からです。

  • お電話(011-213-1017)は、平日9時から17時まで直接つながります。急ぎのご相談ほど、文字のやり取りより先に声で状況を確認したほうが早いことが多いためです
  • 診療情報提供書やケアプラン、お薬の情報などの書類は、FAX(011-213-1018)または初回訪問時の直接お渡しでいただいています
  • 新規のご相談は、目安として数日から1週間、お急ぎの場合は最短で当日の訪問も可能です
  • 病院の地域連携室やMSWの皆様からのご依頼で、退院前カンファレンスにも必要時に参加しています
  • 札幌市中央区を拠点に、札幌市内の全区に対応しています

シンプルな手段でも、「電話をかけたらつながる」「FAXを送ったらきちんと届く」という当たり前の安定感があれば、連携そのものは十分に回ります。当院としては、ツールを増やすことよりも、この安定感をまず崩さないことを優先しています。

ツールの種類より、「必要な速さで届くか」のほうが大事

新しいツールの導入を検討するとき、つい「どのアプリがいいか」に意識が向きがちです。けれど、現場で本当に問われているのは、緊急性の高い情報——体調の急な変化、お薬の変更、看取りが近づいたときの方針など——が、必要なタイミングで必要な人に届く体制になっているかどうかだと思います。

当院は在宅療養支援診療所として、診療時間外の急変にも24時間対応しています。深夜や休日に「これは医療につなぐべきことなのか」「明日まで様子を見ていいのか」と迷う場面は、ケアマネージャーの皆様にも、ご家族にもきっとあるはずです。そうした迷いをフランクに相談していただける窓口があること自体が、どんなツールよりも連携の土台になると考えています。困りごとの種類ごとにどこへ相談するとよいかは、以前ケアマネに相談?医療機関に相談?困りごと別・相談先の早見ガイドにもまとめました。24時間対応の考え方については在宅療養支援診療所(在支診)についての記事もあわせてご覧ください。

新しいICTツールを取り入れることについて、いま考えていること

特定のプラットフォームを新たに導入するかどうかは、当院としてまだ結論を出していません。導入すれば便利になる場面があるだろうとは思う一方で、アプリを一つ入れただけで連携の質が自動的に上がるわけではないだろう、という慎重さもあります。

誰が、どこまで、どのタイミングで書き込むのかというルールが伴わなければ、通知だけが増えて誰も見なくなったり、結局「電話のほうが早い」に戻ってしまったりすることは、他の業界のツール導入でもよく聞く話です。もし当院として何かを取り入れるとしても、まずは連携先の皆様にとって負担が増えない形を、時間をかけて考えたいと思っています。

札幌市中央区で、顔の見える連携を

ツールがどうであれ、変わらないのは「顔の見える関係」を大事にしたいという姿勢です。新規のご紹介・ご相談の流れについてはケアマネージャー・相談員の皆様へのページにまとめていますので、あわせてご覧ください。

「この患者さん、訪問診療につないでいいのか迷っている」「まずは電話で状況だけ聞いてほしい」——そんな段階でのご連絡でも構いません。ケアマネージャー、訪問看護、地域包括支援センター、施設の皆様からのお電話を、札幌市中央区を中心に活動する当院として、これからもお待ちしています。

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この記事を書いた人
札幌インターナショナルクリニック 院長 吉峰 玲
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