訪問診療が増えている理由——通院の負担と暮らしの変化から見えてくること
病院の待合室で、順番を待つ高齢の方とその隣で仕事のスケジュールをやりくりしてきたご家族。半日仕事になった通院を終えて、「次はもう少し楽な方法がないか」とつぶやく——そんな光景は、決して珍しいものではありません。
実際、ケアマネージャーの皆さんや病院の相談窓口を通じて、訪問診療についての問い合わせをいただく機会は少しずつ増えている実感があります。今日は、なぜ訪問診療を選ぶご家庭が増えているのか、その背景と当院の考え方についてお話しします。
通院そのものが「イベント」になっている暮らし
足腰が弱くなってからの通院は、移動・待ち時間・寒暖差だけで想像以上に体力を削ります。受診したその日の夜に食欲が落ちる、少し混乱したような様子が出る、翌日ぐったりして過ごす——通院という行為自体が、高齢の方にとって小さくない負荷になっている場面を、日々感じています。
加えて、付き添うご家族の負担も見過ごせません。仕事を休んで送迎し、待合室で数時間過ごし、また仕事に戻る。この積み重ねが難しくなってきたタイミングで、訪問診療という選択肢が視野に入ってくるのだと思います。
「最期まで住み慣れた家で」という希望が広がっている
もうひとつの大きな流れは、暮らしの終い方についての価値観の変化です。病院で最期を迎えることが当たり前だった時代から、「家族に囲まれて、住み慣れた場所で過ごしたい」という希望を、ご本人からもご家族からも耳にする機会が増えました。検査や治療を積み重ねる医療から、その日の体調に合わせて必要なものを選んでいく医療へ——こうした考え方の変化が、訪問診療への関心を後押ししていると感じます。
制度も「家で完結する医療」を後押ししている
地域包括ケアシステムの整備が進むなかで、在宅医療の役割そのものが広がってきました。訪問看護や訪問薬局、訪問リハビリといった在宅対応の輪が広がったことで、通院しなくても多くのことが家で完結できるようになってきています。人生会議(ACP)や看取りへの取り組みを制度として評価する流れも、こうした変化を後押ししている要因のひとつです。
それでも訪問診療に「壁」を感じる方へ
関心はあっても、「費用がどれくらいかかるのか分からない」「介護保険と医療保険、どちらが使われるのか複雑そう」「今の主治医とはどうなるのか」といった疑問から、一歩を踏み出せずにいる方も多いと感じます。こうした制度面の疑問については、介護保険と医療保険の使い分けについての記事や、訪問診療と往診の違いについての記事でも詳しく整理していますので、あわせてご覧いただければと思います。
札幌は冬場に通院そのものが難しくなる時期があり、それをきっかけに相談をいただくことも少なくありません。この点は雪と通院の負担についての記事でも触れています。
札幌市中央区で「そろそろかも」と感じたら
訪問診療は、通院という選択肢をすべて手放すものではなく、暮らしの状況に合わせて医療との付き合い方を選び直す仕組みだと考えています。「うちの場合はどうなのか分からない」という段階でも構いません。まずは状況を伺うところから、当院にご相談ください。
札幌インターナショナルクリニック 院長 吉峰 玲
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